No11 全部を調査できるわけじゃない!

 

実は、調査官が「社長の発言」や「会社の物」を重要視する理由があります。それは、1回の税務調査ですべてをチェックするのは不可能だということです。

税務調査というのは、変なお金の流れや取引が出てこない限り、2〜3日で終わります。あまり規模が大きくない会社であれば、1日で終わることも珍しくありません。

これは当然で、1社1社税務調査で数週間も時間をかけていたら、他の会社の税務調査ができなくなるからです。調査官も御社の税務調査だけをしていればいいのではなく、ノルマを負っています。また、1人の調査官で1件の税務調査だけをしているのではなく、他の会社の税務調査も同時に進めているものです。だからこそ、調査官側の事情からしても、「効率よく」税務調査を実施する必要があるというわけです。

本来は調査官もすべての取引をチェックしたいのでしょうが、時間の関係もあって実際にはできない以上、調査官は帳簿にない取引を、発言や物で探そうとするのです。

調査官によって税務調査の進め方は違いますが、帳簿をひたすらめくって、都度取引の内容を質問してくる調査官は、社長からすると嫌な感じがするとは思いますが、こんな調査官はデキない調査官なのです。デキる調査官は、「当たりをつける」ことが非常にうまいです。
 
全体を理解したうえで、細かいことをチェックせず、漏れや抜けがありそうなところばかりチェックしてくるのです。デキる調査官にかかると、会社が気付いていない従業員の不正まで発見されることもあり、驚くばかりです。

また、場合によっては「資料せん」を持ってくる調査官もいます。「資料せん」とは、税務署が内部で集めている資料で、取引先などから収集した取引金額などの情報が記載されたものです。調査官が「資料せん」を持っていると、チェックする取引を当初から的を絞ってくるので、対応は楽なのですが、誤りが見つけられることも多くあります。
ただ調査官が「資料せん」を持っているかといって、絶対に不正が見つけられるかといえばそうではありません。「資料せん」自体が間違っていることもあります。調査官が自信満々に来たとしても、おびえる必要はありません。

税務調査では、金額の大きい取引、主要な取引先との取引、現金が絡む取引に目を付けられやすいので、普段から税務調査の対象になりそうなポイントは、すぐにでも説明できるようにしておくことが、税務調査の正しい対応方法です。