No21 退職にそなえる

 

前項に引続き、社長の報酬と退職金については説明したいと思います。

まだ引退を考えていない社長であっても、いつかは引退する、もしくは、何かあった場合に引退せざるを得ないリスクは、経営上いつも考慮しておかなければなりません。そこで、引退するときに税務上もっともリスクなのは、退職金の金額設定です。

退職金は毎月受け取る給料(役員報酬)と違い、かなり高額になりますし、退職金で老後の生活等を考えるべきものですから、税務上の課税は優遇されています。つまり、給料よりも、退職金の方が税金は安いのです。
 ここで問題になるのは、退職金の金額設定。高い金額を支給してしまうと、税務調査で「この退職金は高いです!」と言われてしまいます。役員報酬と同じで退職金すらも、自分で決めることができないのか・・・

さてここでまず、退職金の金額設定に関して知っていただきたいことがあります。役員の退職金は、通常このように計算されます。

適正な退職金=@在任年数×A功績倍率×B最終報酬月額

この式を解説すると、
「@在任年数」は社長を何年したかです。長ければ長いほど、会社に貢献したということで、退職金の額は増えることになります。もちろんこの期間は操作できるものではありません。「A功績倍率」とは、あまり聞きなれない言葉ですが、社長でいえばだいたい「3」前後が目安になります。そして最後の「B最終報酬月額」。これはその名の通り、引退するときの最後の月額報酬です。

 例えば、社長を20年間してきて、功績倍率を3、最終月額報酬が100万円であれば、退職金は6000万円ぐらいまで出しても、税務調査では文句言われないだろうというわけです。

ここで真面目な社長ほど、退職金で驚くことがあります。真面目な社長は、会社のためにと、自分の報酬を抑えている場合が多いのです。もちろん会社のことを考えれば、それはベストなのかもしれませんが、そのまま引退してしまうと、最終報酬月額が低いので、退職金がそれほど支給できない結果になりかねません。これは、会社の経営が厳しくなったときに、役員報酬を無理やり下げる場合も同じリスクがあるのです。

 いきなり利益がでても、赤字に陥っても、役員報酬を変動させるのは、常にリスクがあるということは知っておいてほしい事実なのです。