No36 「無予告調査って何?」

 

税務調査は通常、1〜2週間前に連絡があり、「○〇日に税務調査に行きたいのですが、ご都合はどうですか?」と事前に調整があるものです。しかし、事前に連絡がある税務調査ばかりではありません。何の連絡もなく、いきなり調査官がやってくることもあるのです。これは「無予告調査」と呼ばれています。

そもそも、無予告調査が「法律として」認められているのかというと、これは認められています。正確にお伝えすると、法律には「税務調査は事前の連絡をする」などの明確な規定がないため、事前の連絡がない税務調査も認められていると、実務上は解釈されているのです。

では、無予告調査はどの程度行われているのでしょうか。

国税庁のホームページによると、税務調査を行ったうち「法人の約1割、個人事業主の約2割が無予告調査」と公表されています。かなり高い確率で無予告調査が行われていることがわかります。

事前の連絡がない税務調査がなぜ行われるのか、と考えてみると、飲食店などの現金商売のように、事前に税務調査の連絡をしてしまうと、売上金額が正しく申告されているかどうか、税務署が把握しにくいと考えているからです。
 しかし一方で、現金を取り扱っていない会社・個人事業主にも、無予告調査が行われているのが実態です。税務署が持っている情報から、「何かあやしい」「事前の連絡をすると税務調査がうまくいかない可能性が高い」と判断されると、無予告調査になるわけです。

さて、そもそも税務調査は何のためにあるのか、と考えてみると、会社や個人事業主の方が(税理士に頼んで作成して)税務署に提出した申告書に、計算誤りがないかどうかを調べるために行われるものです。利益を不当に低くしたり、違法に税金を免れようとしてないかを、税務署の調査官が確認するわけです。この主旨から、このような法律の規定があります。

「質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」

このように「税務調査は犯罪捜査とは違いますよ」と明記されているのです。つまり、税務調査を受ける人たちは、「何か悪いことをしているんだろう」とういう前提にたってはならない、とされているのです。

この法律からもわかるとおり、税務調査というのはあくまでも「任意」であって「強制」ではありませんから、会社・個人事業主の許可なく、調査官が勝手にキャビネットを開けたり、パソコンを触るのは法律に違反しているというわけです。