No38 「税理士抜きで会わない」

 

前回は、「税務調査の事前連絡は、先に会社にいきますよ。でもその場合は、税理士に全部任せてください。」ということを書きました。今回はそれと合わせて、税務調査途中の対応についての注意です。

税務調査が始まった段階では、当然税理士が立会うわけですが、1〜2日で終わらない税務調査も多くあります。帳簿や請求書を見せても、その場ですべてが解決するわけではありませんから、調査官が税務署内で検討する場合や、こちらが資料を追加で提出しなければならない場合などは、「後日また会って検討しましょう」となるわけです。

しかしここで、税理士抜きで経営者に会って事情を聞こうとする調査官もいるのです。税理士がいると、経営者は本当のことを言わないと思っているのでしょう。調査官は疑うことが仕事だとはいえ、タチが悪い行動でもあります。

「税理士先生はお忙しいようですから、社長と我々だけで協議しませんか?」
「近くまで寄ったのですが、今から時間とれますか?」
「税理士先生がいなければ本当のことを話してくれますよね?」

調査官がなぜこのような行動をとるのかというと、税法(税金の仕組み)のことがあまりわからない経営者と話して、税務調査を税務署有利に進めたい、と考えているからなのです。

このような調査官の誘いに乗ったばっかりに、不利な発言をしてしまうリスクばかりか、不利なことを書いた書面にサインをさせられてしまうケースもあります。このような書面にサインをしてしまえば、サインした書面を証拠に、悪いことをやったという意識がまったくなくても、いつの間にか多くの追徴税額を課されることもあるのです。

このような状況に陥らないようにするには、税務調査の途中で調査官から直接連絡があっても、こう伝えることです。

『税金に関わる全てのことは顧問税理士に任せているので、そちらに連絡してください』

これは税務調査の事前連絡があった場合とまったく同じ言葉です。何も難しいことはありません。
税務調査では税理士がいない方がいい、と調査官が考えているということは、逆に考えると、税務調査では税理士がいるだけで有利、ということでもあるのです。

何があっても税理士不在の状況を作らないでください。