No51 「春の税務調査対応」

 

前回は、税務調査も時期によって特徴が違うことを、税務署的な視点から書きましたが、それらを踏まえたうえで、わかることをさらに考察してみたいと思います。

税務署の職員は7月上旬に転勤(異動)があり、誰が転勤になるのかも知らされていません。
またここが大事な点なのですが、税務調査を担当している調査官は、6月までで税務調査を締めなければならないのです。
なぜなら、税務署の1年は6月に終了するからです。

ちょっとわかりにくいので、もう少し説明を加えましょう。

11月に税務調査があったとします。調査の過程でいろいろな不明点なり、税務署と納税者(顧問税理士)に見解の相違があったとします。そうなると税務調査は長引いていくのですが、年末までに終わらなかった調査は、(調査官からすると不本意かもしれませんが)年越しすることになります。

では、同じケースが春だったらどうなるのでしょうか。

5月に税務調査があったとします。同じように長引きます。しかし、かなり特殊な事情がある場合を除いて、7月まで延びる税務調査はありません。これは、

・税務署の1年の締めが6月末であること
・担当調査官が転勤になるかもしれないこと
・転勤にならなくても担当から外れること

の3つの事情に起因しています。

さらに、です。税務調査を担当している調査官には引継ぎがありません。

普通の会社であれば、転勤・異動になれば仕事の引継ぎを行うのですが、税務調査は俗人的な判断をともなうことが多く、また実施している件数が多いため、本来は6月から7月の年度をまたぐ調査であったとして、引継ぎを行うことはありません。

ここまで書くと、気付く方も多いのですが、実は春の税務調査の方が対応は楽なのです。
秋の税務調査と違い、春の税務調査が延々と長引くことはありません。しかも、6月までに税務調査を終わらせたいのは、こちら(納税者)側の都合ではなく、調査官側の都合なのです。

時期によって税務調査の交渉のやり方は変わります。6月まで延びた税務調査であれば圧倒的に有利になるといえるでしょう。