No65「通達は否認根拠になるのか?」

 

前回から引続き、租税法律主義についてお伝えしましょう。

租税法律主義は憲法第30条と84条で定められています。つまり、税金は「法律に従って計算してください」というわけです。
では、税務調査において法律以外は否認根拠にならないのでしょうか?

もちろん理論的にいえば、税務調査において法律以外が否認根拠になることはあり得ないはずなのですが、現実は違います。
国税庁が出している「通達」が否認根拠になることの方が多いのが現実なのです。

では、調査官から「この通達に反しているので否認します」と言われた場合、どのように対応するのが正しいのでしょうか。

ここで、「通達は法律ではないので、否認根拠になりません」と主張しても通らないことは確実です。 なぜなら、確かに通達は法律ではないのですが、調査官(国家公務員)は通達を守らなければならない立場だからです。

つまり、会社や一般国民は通達を守る必要はないにしても、調査官が通達を守らなければならない以上、間接的に通達に拘束されているといえるのです。
なんだか話がややこしいですね。

そこで、「通達は法律ではないから守らない」と主張するのではなく、違う角度から反論する必要があるのです。

法人税基本通達の前文(一部抜粋)にはこう書かれています。

「この通達の具体的な運用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るように努められたい。
いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい。」

つまり、前回取り上げた最高裁決ではありませんが、通達というのは、画一的に運用・適用してはならないと定められており、さらに「社会通念=常識」が上回ると規定されているのです。

一度決められたルールはなかなか変わりません。

かなり昔に規定された通達も多くあります。しかし、現実は常に変わり続けています。

税務調査が行われた今この瞬間の常識が、通達より優先されると書かれているわけですから、この「前文」はぜひ知っておいてください。